#dearMoon
「月に行く人たちにピース&ラブを捧げるよ」
リンゴ・スター (元ザ・ビートルズ)特別インタビュー
Jun. 3, 2019
元ザ・ビートルズのドラマー、リンゴ・スターが約2年半ぶりに来日。スティーヴ・ルカサー(TOTO)やコリン・ヘイ(元メン・アット・ワーク)、ヘイミッシュ・スチュワート(元アヴェレージ・ホワイト・バンド)ら豪華メンバーで構成された、「リンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンド」を率いて全国7都市9公演を敢行。4月11には大阪・オリックス劇場にてファイナル公演を行ない、大盛況のうちにツアーは幕を閉じた。
このインタビューは、ツアー初日となる3月27日、福岡サンパレス ホテル&ホールにて開演直前に行なわれたものである。10分という短い時間だったが、日本でツアーをする喜びやニューアルバムのこと、今年制作されるビートルズのドキュメンタリー映画(ピーター・ジャクソン監督)のことなどざっくばらんに話してくれた。また、日本の起業家・前澤友作が企画中の<#dearMoonプロジェクト>についても関心を寄せ、彼へのエールも忘れなかった。
思えばビートルズは、通算4枚目のアルバム『Beatles for Sale』の中で、ドクター・フィールグッド&ジ・インターンズによるR&Bの名曲「Mr. Moonlight」をカヴァーしている。また、ジョン・レノンのペンによる「Across the Universe」は2008年、NASA設立50周年を記念し北極星「ポラリス」に向けて発信された。リンゴ自身もソロ・アルバム『Goodnight Vienna』のジャケットで、SF映画『地球の静止する日』をパロディにするなど、宇宙への関心は決して少なくないはず。
超一流のアーティストとともに、384,400km離れた月へと向かう<#dearMoonプロジェクト>。果たしてリンゴは、どんな感想を抱いたのだろう。ズバリ、月へは行ってみたい……?
リンゴ・スター :元ザ・ビートルズのドラマー。1970年にバンド解散後は、ミュージシャンとしてだけでなく俳優としても活躍。現在は「リンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンド」名義でコンスタントにライブ活動を行なっている。
日本を含め世界中をツアーしているあなたから見て、ツアーの面白さはどういうところにありますか?
リンゴ :日本での演奏はいつだって楽しいよ。家で1人でドラムを叩いてたって退屈なだけだしさ。素晴らしいミュージシャンとリハーサルしたり、ステージに立ったりすることが何よりも好きなんだ。オール・スター・バンドのメンバーも少しずつ変化していて、毎回新鮮さがあるね。
ニューアルバムも制作中なんですよね。
リンゴ :今は新作を少しずつ作ってる。僕にはたくさんの音楽仲間がいるので、彼らがお茶を飲みに遊びに来たら、彼らを誘ってセッションしたり、共作したりしているんだ。そのためのちょっとしたスペースが家にあるからね。
Photo by Masanori Doi
今年は、ザ・ビートルズのルーフトップ・コンサートから50年ということで、ピーター・ジャクソン監督による映画が製作されると聞きました。
リンゴ :『ゲット・バック・セッション』で撮影した映像で、まだ世に出てない素材が56時間もあるんだ! マイケル・リンゼイ=ホッグが編集した、当時の映画『Let It Be』は、いささか不本意な内容だったと思ってる。ジョンとポールがやり合っているところをあえて抜き出したりしていてさ。でもあの時、ビートルズのメンバーはたくさんの喜びを感じていたし、めちゃくちゃ笑い合ったし、何よりいい音楽がたくさんあったからね。残された素材をピーターと一緒に、iPadを使ってすべてチェックしたよ。ピーター・ジャクソンによる新作は、当時の空気感にちゃんとフォーカスを当ててくれるだろう。観ている人がもっと高揚する作品になると思うよ。
<#dearMoonプロジェクト>は、2023年に予定されている世界初の民間月旅行に画家、写真家、音楽家、映画監督など、世界的なアーティストが最大8人同行するんです。
リンゴ :月へのパッセンジャーズ(乗客)だね。いいね。
同プロジェクトの発起人、前澤友作氏はあなたと同じくラブ&ピースのメッセージを持ち、かつてドラマーとしてバンドで活躍していたんですよ。
リンゴ :では、2つ席を用意してほしいと彼に伝えておいてくれ。ただ、いざ自分が本当に月に行けるかどうかというと正直わからないな。頭の中では「面白そう!」という反応を示してるけど、心の中ではまだ答えが出ていない。
あなたが月に行ったら、いろんなインスピレーションが浮かんできそうですね。
リンゴ :そうだね。作曲した曲はどれも「家に帰らせて」ってメッセージになると思うけど(笑)。
楽しみにしています。最後に、月旅行に行く初の民間人と前澤氏にメッセージをお願いします。
リンゴ :月に行くすべての人々にピース&ラブを捧げるよ。彼らは月面を歩くのかい?
いえ、宇宙船で月を周回します。
リンゴ :いいね。タフな旅行になりそうだけど。
ビートルズがインドへ長期滞在した時も、メンバーの誰よりも早く根を上げて帰国したというリンゴ。月旅行に対するコメントも、そんな彼の人柄がよく出た非常にユニークなものだった。
ビートルズ時代の楽曲や、リンゴのソロ代表曲、そしてTOTOやサンタナ、メン・アット・ワークなどメンバーたちのヒット曲も惜しみなく披露した、リンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンド。彼らの「ピース&ラブ」というメッセージは、きっと多くの人たちの胸に刻み込まれたことだろう。
取材・文:黒田隆憲、Rolling Stone Japan